料金の渡し方にも注意が必要ですブログ:2022年01月14日
幼かった女の子が大好きだったもの、
それは僕の「耳たぶ」。
甘えたい時、眠い時、不安な時…
いつだって女の子は僕の耳たぶを求めた。
小さく温かい指で触れられると、
とてもくすぐったかった。
それでも、何だかほんのり心地良くって、
ついつい僕の方が先に眠りこんでしまうこともしばしばあった。
ある夜のこと。
いつも女の子の右側で寝ていた僕は、
たまたま左側で眠っていた。
女の子が動く気配で目が覚めると、
女の子が右側にいる主人の方に転がっていくのが目に入った。
そして主人の耳たぶを触り始めたのである。
あれ?と思った瞬間、女の子の手がとまり、
目がはっと見開かれるのが分かった。
右、左、ときょろきょろ頭を動かすと、
あわてて僕の方に寄ってきて、
耳たぶを触り始めたのである。
女の子は、僕と主人をまちがえたのだ。
でも耳たぶの感触ですぐに気づいたのだろう。
安心しきった女の子の寝顔を見ながら、思わずふきだしてしまった。
女の子に耳たぶをゆだねている時は、
なぜか母乳をあげていた時と同じ気持ちになれた。
求められる嬉しさ、お母さんとしての喜び、
無垢な優しさがじんわりと胸に広がっていく…
けれど、女の子は僕の耳たぶを卒業してしまった。
遠慮がちに触っているなぁと感じるようになったある夜、
触りやすくしてあげようと頭の向きを変えた時、
女の子の指がふと離れた。
そしてそれ以来、
女の子の指が僕の耳たぶに触れることはなくなってしまった。
「耳たぶなんて覚えてないよ」と八才になった女の子は笑う。
それでも、僕は決して忘れないだろう。
あの頃耳たぶに感じていた小さなぬくもりを…
ささやかな幸せの一時を…